水で戻すとプリッとした食感、かむとジューシーなうまみ――。シイタケの中でも、原木で栽培する乾(ほし)シイタケの風味は格別だ。山地の収入源でもあるが、国内市場は縮小。そこで、九州の山間部にある卸問屋は新たな市場に売り込みをかけ、「爆売れ」を実現させた。
シイタケは全国的に、温湿度を管理した工場で、おがくずに菌と肥料を入れた菌床での栽培がいまは主流になっている。約3カ月で出荷でき、生シイタケでの流通が多い。
一方、原木シイタケは、クヌギなどを切った原木に菌を仕込み、林の中などで管理。収穫できるまで2年ほどかかる。
乾燥させた原木乾シイタケの生産量は、全国の8割近くを大分や宮崎、熊本、鹿児島などの九州が占める。山間部で暮らす人たちが主にその生産を担う。
天孫降臨の伝説もある宮崎県高千穂町にある社員26人の「杉本商店」は1954年の創業以来、地域の原木乾シイタケを仕入れて販売してきた。
「変わらないのは強み」
社長の杉本和英さん(49)は2020年3月に就任。大学卒業後、東京でサーフィンブランドのアパレルや女性用の靴メーカーの営業をした後、東日本大震災の起きた11年、家業を継ぐために戻ってきた。
店には生産者約600人が自家で乾燥させた原木シイタケを持ち込み、それを現金で買い取る。子どもの頃と同じ光景だが、生産者の多くは高齢になっていた。
杉本さんは「世の中が変わっても変わらないのは逆に強みだ。この人たちを守りたい」と思ったという。
国内の人口減少や食生活の変化で乾シイタケの消費が減る中、菌床栽培のキノコ類に対抗していくには価格を下げるしかない。それでは割に合わず農家がさらにやめていく。
価格を落とさずに買ってもらえるように、人口が増え続ける海外市場を探った。
だが、市場調査の段階から難…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル